美容室のトリートメントは
外部皮膜のトリートメント
というお話をしましたね。
簡単に言えばシリコーンなどの皮膜物質でコーティングしているだけなんです。
その結果が↓のような不自然な光沢を放つ髪というわけですね。
このような光沢の仕方は人の髪の毛のものではありません。
まるで床磨きに使う「ワックス」のようだと思いませんか?
これはもう明らかに無機的な輝き。
シリコーンやミネラルオイルの持つそれです。
確かに見た目は美しいかもしれませんが、
これはあくまで一過性のもであって、
当然長持ちはしないのです。
コーティングはいつかは剥がれて本来の髪が出てくるので、
結局はあなたの髪が蘇るというわけではありません。
しかしただ髪の毛をコーティングする…
というだけの話であれば、
「ただのぼったくり」
で話は済みますね。
しかしこの話はそれだけでは済みません。
実はカットだけしてからトリートメントというのであれば、
結局は「ぼったくり」というだけの話になります。
しかしもし、
縮毛矯正やパーマ、カラーリングのあとに
このトリートメントを行うと、
ダメージを補修するどころか
さらにダメージを蓄積することになるのです。
これは一体どういうことでしょう。
◎パーマやカラーリングのダメージとは
みなさんはパーマやカラーリングの原理をご存知でしょうか。
ほとんどの素人さんはあまりご存知ないのではないかと思います。
美容師さんで知らなかったらそれは少しまずいですよ。
この原理の話はまたいずれ詳しくお話するとしまして、
とりあえずこれらのケミカル処理には沢山の化学薬品が用いられます。
まずどの処理にも必ず使われるのが
「アルカリ剤」
と呼ばれる化学薬品です。
アンモニアや炭酸水素ナトリウムなどがポピュラーですね。
これらは毛髪のキューティクルを接着している細胞間脂質を溶解させて
薬剤の通り道を作る為に入れられます。
さらにカラー剤の場合は「染料」が、
パーマ剤や縮毛矯正剤の場合は
チオグリコール酸アンモニウムやシステアミン
などの「還元剤」がいれられます。
この還元剤が毛髪の内部の結合を切断していきます。
そして十分薬剤が仕事をしたら次の薬が加えられて、
染料を定着させたり、還元した毛髪を酸化させたりして
毛髪はできる限りもとの状態に戻されるわけですね。
サラッとここまで説明してきましたが、
これらの処理が恐ろしく過激な荒業であることにみなさんはお気付きでしょうか。
カラーリングはまだしもパーマや縮毛矯正は、
毛髪の内部の結合を一度切断しているのです。
当然毛髪に対するダメージは相当大きなものになります。
しかも縮毛矯正の場合は多くの場合「熱処理」が加わるので、
これらのダメージ度合いを簡単に序列化すれば
縮毛矯正>パーマ>>カラーリング
という形になります。
さて、先ほどこれらの処理では
最終的に出来るだけ元の状態にもどされる…
と言いましたが、
実際には元の状態に戻ることなどありえず、
例えばアルカリ剤で開かれたキューティクルはそのままですし、
還元剤や酸化剤が毛髪の内部に残留してしまうこともあります。
パーマやカラーリングのあとに異臭を感じることがあるかもしれませんが、
あれは残留したアルカリ剤(アンモニアなど)や還元剤が揮発して臭いを発しているのです。
アンモニアは異臭がありますが揮発しやすいので
時間が経てば残留アルカリは消えてくれます。
しかしその間の毛髪は非常に脆い状態になっている為、
使用するシャンプーなどによってはダメージが深刻化する場合もあります。
本来であれば、
パーマ・カラーリングの後には
弱酸性のシャンプーなどで残留アルカリを除去したり、
ヘマチンなどの後処理剤を作用させて未酸化還元剤を除去したり…
つまり
毛髪に残留した薬剤を中和する為の
十分なアフターケアを行う必要があります。
このアフターケアが不十分だと
毛髪のダメージが日々進行していくことになるのです。
ちなみに十分なアフターケアは専用のシャンプーなどを使っても1週間は最短でも掛かります。
何もしなければただ延々とダメージが進行していく形になるわけですね。
そして、
この状態で行うトリートメント=毛髪のコーティングがなぜいけないのか、、
頭の良い方は既にお気付きかもしれませんね。
使用するシャンプーなどにもよりますが、
美容室で行うトリートメントは基本的に数週間は皮膜を継続します。
これは通常のホームケアでは使われない高重合シリコーンを幾重にも重ね、
ちょっと洗った程度では落とせないように加工してしまうからです。
トリートメントの種類によれば、
アイロンでプレスすることで皮膜を癒着させてしまうようなタイプのものもあります。
(M○Dとかいうやつです…)
これはシリコーン皮膜が毛髪に癒着しているので非常に厄介です。
専用のシリコン除去でも簡単には取れません。
場合によっては月単位で皮膜が継続します。
これらのトリートメントは最低でも数週間は強力な皮膜が持続する為
その間はまるで髪が蘇ったような気になりますが、
数週間すれば皮膜が剥がれ、自分の本来の髪が現れます。
するとどうでしょうか。
まるでツヤも艶も無いバッサバサの髪になってしまうことがあります。
特に縮毛矯正を行ってからトリートメントをした人は高確率でこの状況になります。
縮毛矯正をかけ続けるとまるでお人形の髪のような
ビニールのような質感になっていくことがありますね。
あれはただ単に縮毛矯正のダメージが表層化したからではありません。
縮毛矯正のあとにトリートメントをしてしまったからです。
先ほど言ったように、
縮毛強制やパーマをかけると毛髪の内部に薬剤が残留します。
当然処理剤を用いてそれらを除去する工程はありますが、
限られた時間で完全に処理し切ることは中々難しいので、
多くの場合未処理の薬剤が毛髪に残留していることが多いです。
正しい知識のある美容師さんだとその未処理の薬剤を除去する為の
炭酸処理やヘマチン処理などを独自に導入していることもありますが、
知識の無いメーカーの言いなり美容室だとそんな工程は無しで、
いきなりトリートメントでガッツリコーティング…
ということがしばしば行われているのです。
特にM○Dなどのメニューではトリートメントがセットになっているので、
否が応にも矯正後にトリートメントでコーティングされてしまうのですね。
さぁ、この状態は非常にまずいです。
簡単に言えばケミカル処理後のトリートメントは
髪の毛の内部に髪の結合をどんどん切断していく薬剤を閉じ込めたまま、
外部に簡単にはがせない皮膜をガッツリコーティングしているのです。
この結果、
外見はつやつやの綺麗な髪に見えますが、
内部は延々と結合が切られていって
気づかぬうちにトロトロにとかされたような状況になってしまうのです。
そんな状況で外部だけ皮膜で固めるので、
まるでビニールのような感触のお人形の髪の毛が出来上がるわけですね。
数週間、数ヶ月後に皮膜が剥がれたらあらびっくり、
いつの間にか髪の毛が再起不能状態になっていた…
というオカルト話は有名です。
◎美容室でパーマやカラーリングをしたら…
美容室でパーマやカラーリングをかけてもらったら、
その流れで美容室でトリートメントを行ってはいけません。
内部に薬剤が残留したまま外部を固められてダメージが深刻化する恐れがあるからです。
もちろん後処理がうまくいっている場合はほとんどダメージが残らないこともありますが、
ほとんどの場合後処理で完全に薬剤が除去されることはありません。
(パーマをかけてアンモニア臭がしないことってほとんど無いと思います)
もしパーマやカラーリングをしてほとんどダメージを残したくない場合には、
正しいホームケアを一週間ほど続ける必要があります。
これが十分に出来れば、
1~2ヶ月スパンでカラーやパーマをしてもほとんど髪が痛みませんし、
カラーやパーマが格段に長持ちします。
この正しいホームケア法に関しては、
また後日おはなしさせていただきますね。
良いですか、
今まで何も考えずに美容室でトリートメントをお願いしていた消費者の皆様、
これから美容室でトリートメントはもうやらないでください。
何千円何万円もかけて髪をダメージさせることになります。
そして今までこの事実を知らなかった美容師さんは、
今度からお客様にトリートメントをお願いされたら
「トリートメントしたら髪が傷みますけど大丈夫ですか?」
とお伺いをしてください。
一過性の美をとるか、ダメージを深刻化させないか、
お客様の美を本当に願うのであれば、
正しい選択を促してあげてくださいね。